拠点B

世界の記述

無題 2023


 何年か前から続いているモノレールの延伸工事の音がたいして気にならなくなった。なぜだ?
 乾いた衝撃音と振動は部屋の薄い壁一枚ではほとんど吸収されることなく、どちらかというとおれの凝り固まった愚鈍な脳味噌の二層目あたりできれいに無力化されていく。此方から手を差し伸べない限り乾いた音が最深部まで到達することはなく、かといって一度手を差し伸べてしまえばその音は純粋さを欠いてしまう。とてもかなしいことです。聞こえてんだろうがよ、間抜けが。
 ところでやつらは2080年までに行川アイランドあたりまで路線を延ばす気らしい。到底無理な話だと思うけど、君はどう思う?

 どいつもこいつも毎年「もっとできた」なんて言いながら年を越して行きやがる。必要以上に深刻ぶりやがって。来年もおれとおまえらにとって都合の良い一年になりますように!

 さて、次に大事なのは姿勢だ。悪い姿勢のまま問題を凝視したり抱え込んだりすると、いつもより節々にかかる負荷は大きくなるし、実態以上に重みを感じやすい。これが癖になってしまうと、ものごとに向き合う姿勢はどんどん歪に、重苦しくなっていく。どこか早い段階でどうにかして断ち切り、自己完結型の無駄な真面目さをとっぱらってやる必要がある。

そこでこの「エンブリー」



ダーク琴奨菊 自伝
第4章 第31節より